スポンサーサイト

スポンサー広告
-- /-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

リレー小説8

リレー小説
06 /10 2010
リレー小説第7回

更新遅くなりました!
リレー小説7回目です。

2番目に書いてくださったのは……時生彩さんでした!
当たりましたか? 


さて、というわけで、時生さんの回始めます!

リレー小説これまでの簡単なあらすじ。
見たくない人用に白文字にしてます。

*あらすじ*

理不尽な世の中を、「そういうものだ」と諦めることで今まで生きてきたエム。
彼女は朝から晩まで縫製工場で働き、食うや食わずの毎日を送っていた。
ところがある日…
町をあげての一大行事――領主の息子の花嫁をお披露目する会――が行われる日のこと。
エムは見ず知らずの怪しげな老女に出会い、小さな巾着を押しつけられる。
それが、彼女の受難の始まりだった。

あらすじここまで。
 エムは部屋を移された。通された部屋は歪みひとつ見当たらず、先ほどの部屋よりいくらか狭くはなっているが、それでも広いことには間違いなかった。天井を見上げ、シャンデリアの下を避けるように歩いていく。肩越しに見た崩壊していく姿が瞼にちらついていた。窓へと近づき、淡い期待を持ってカーテンを開くが、やはりこちらにも柵がびっしり並んでいた。
 エムは一息ついて頭をひねる。
 心が落ち着くまで、としばらく一人の時間を与えられていた。「奇抜」な体験をしたので少しばかり時間が必要だということだ。あれは奇抜というほどかわいいものではないとエムは反論したかったが、丸め込まれてしまう可能性は高かったし、しつこく食い下がることによって果ては軟禁ならず幽閉という事態になりかねないと思ったからだ。それほどこの婚礼は重要だと理解はしているが、あいにくと了承できるようなものではない。
 唯一の出口であるドアの向こうにも変わらず衛士が張り付いている。彼を納得させるべく、たいそうご立派な言い訳を考えてはみても、これまで平凡な月日を過ごしていたエムには明日までにほつれなく百枚の服を仕上げておいでと言われるほど困難であった。それに、壁の向こうから覗く大きな瞳の記憶が想像の邪魔をする。壁が崩れる音もまだ耳に新しく、そう、何かが倒れるような音も──……いやまて、それは体験していない。
 エムは今しがた聞こえた音の方を向いた。廊下に繋がるドアの方向だ。これはまたあの恐ろしい出来事の前兆かと、エムは後退りする。ドアが音も立てずに開いていく。ソファーの陰に隠れようとしたとき、部屋にするりと黒い影が入り込んできた。
「だ、だれ?」
 影と思ったのは黒いローブだった。一応、人の形をしている。
「まったく。老体を働かせるんじゃないよ」と怪しげな人物はぶつぶつと呟いている。……怪しい? エムはその風貌に見覚えがあり、眉を顰める。文句をたれながら細い枝のような手が薄汚いベールを下ろし、顔が露になる。エムは思わず身を乗り出した。
「あなた、あのときのっ!」
「やあ、お嬢さん。たいへんなことになっているようだね」
 まるで旧友に会うかのようにひらひらと手を振って挨拶してくる人物は、泥沼の根幹とも言えるべき、小鳥の入った袋を押し付けてきた老女だった。
 エムは走り寄る。そして老女の胸倉を掴みあげたかった。だが、老女はトンと押せば倒れそうなほど細くて、そのくせ、彼女の歯は肉を食いちぎるように尖っている。手を伸ばせば食いつくされそうで、握り拳を作った。
「だれのせいでこんなことになってると思ってるの!? 全部あんたのせいでしょう!」
「おやまあ。これはひどい。袋を渡すっていう簡単な、子どもだってできるお使いを、妙齢のお嬢さんがしくじっちまったんだよ! そんなとんちき騒ぎが起こるなんてお天道様が火傷するってくらいありえないね。わたしゃ悪くはないよ」
 老女の一本抜けた歯の隙間からシシッと息が漏れている。
 エムは顔を赤くした。この老女、すべて私に押し付ける気だ。袋を渡すよう頼んできたときは老女の「老体だから」という言葉を信じて引き受けた。だが、今の彼女はどうだろう。部屋に入ってきたときのなめらかな動き。私をまぬけと笑う姿。これは完全にだまされたんだ。
「こ、この婆……!」
「これこれ! 年上は敬えと教わらなかったのかい」
 老女は耳に手を添えてエムに差し出してくる。その耳たぶを引っ張って目が回るくらい大声をだしてやろうかとエムは息を吸ったが、こんなことしている場合ではなかったことをはたりと思い出した。
 エムは奥歯をかみ締めて声を絞り出す。
「……どうしてここに来たの?」
 その声に潜む怒りに老女は気づいた様子もなく、「おやそうだった」とうしろを振り向いた。
「こりゃまいった。もうろくしちまったのかねえ」
 老女は口をいっぱい開いた顔をエムに向けた。
「お嬢さん、私以外にだれか見えないかね」
 老女の指差す方向はドアがあり、開いた隙間から衛士が倒れている様子が目にはいった。少し前に聞こえた音は彼が倒れる音だったのだろうか。衛士がいることを伝え、何故倒れているのかと尋ねたが、老女はやれやれと肩をすくめた。
「ちったぁ落ち着いてはくれないものかね」
 やはり、と言うべきか検討外れの答えだった。老女に明快な答えがもらえるとは期待してはいけなかった。
「これでも少しばかり悪くは思っていてね。サリーを連れてきたんだけどね。私の色っぽい後姿は刺激がすぎたのかの。これ、へんな顔をするではない。おそらくサリーは若造の下へ向かったんじゃろうな」
「サリーってだれのことよ」
 老女は歯の隙間で笑う。
「花嫁になるはずだった女性さ」
 エムは息を呑んだ。老女の言う女性とは袋を渡すはずだった相手のことだが、老女はそのサリーという女性の説明もいい加減に済ませてしまう。それでもエムは老女の「ついてきなされ」との誘いに応じた。胡散臭い老女だろうとも、招待客とは少しも思えない彼女は安全な道を知っているはずだ。もし何かあったら途中で逃げ出せばいい。エムはそう決意して、衛士を跨いで廊下に出た。

コメント

非公開コメント

レガロシリーズ編集部

近刊情報やイラスト情報を公開!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。