スポンサーサイト

スポンサー広告
-- /-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

リレー小説1

リレー小説
01 /05 2010
リレー小説第1回
 この人生、過度な期待など抱いたことは一度もない。

 どうせ貧しい生まれの貧しい育ち、そしてきっとこれからも貧しく細々と生きていく身の上だ。
 だからエムは、滅多なことでは「後悔」などしたことがなかった。色々と世の理不尽には揉まれてきたが、それはもうそういうものだと自分の中で割り切る術を身につけている。何か問題が起ころうとも、深く悩んだりせず、すぐに諦めがつくようできているのだ。
 ……だがそれにしても、今回ばかりは。
 ちょっと久しぶりに、海より深く「後悔」とやらをしているかもしれない。

 事の発端は、町外れで老女に声をかけられたことだった。
 町の小さな縫製工場で働いているエムは、この日もいつも通り、洋服の前衣と後衣をひたすら縫い合わせるという退屈な仕事に従事していた。
 雑な仕事で数だけ作る、そういう工場だから、エムも職人と言えるほど腕が立つわけではない。むしろ素人もいいところで、出来上がる服は時々妙に歪んでいたりするのだが、実際それは大した問題ではなかった。雇い主は安い賃金で働く人間がいれば満足だし、顧客は安い代金で服を購入できれば満足だし、エムだって安い給料でも貰えればそれで十分ありがたい。とりわけ孤児院出身のエムにとっては、仕事にあぶれればすぐに生活が立ちいかなくなるのは目に見えているのだ、どんな仕事だって喜んで引き受けるというものだった。
 いつもは日が沈むまで工場に篭りっぱなしのエムだが、この日は常とは少し違った。というのも、今日は町の一大行事が執り行われる関係で、仕事が午前中で切り上げとなったからだ。
 一大行事――町の領主の息子の、花嫁をお披露目する会。
 いわゆる婚約披露会というやつだ。はっきり言ってエムには全く興味のない行事ではあったが、町全体で盛り上げるために、飲食店以外は午後の仕事を止めて飲めや歌えのバカ騒ぎをしなくてはならない。
 とはいえ、真っ直ぐ家に帰れば罰せられるというわけでもないので、エムは浮足立つ人々を尻目に家へそのまま戻ることにした。とある老夫婦の家で一間借りて住んでいるから、少しは家の手伝いもしなければ肩身が狭い。
 そんな折だったのだ、突然見も知らぬ老女に声を掛けられたのは。
「ああ、お嬢さん、あんたに頼みたいことがあるんだが」
 薄汚いストールを頭からかぶった、いかにも怪しげな老女。どこからともなく姿を現し、狙ったようにエムに手を伸ばしてくる。その言葉も相まって、エムは思わず眉根を寄せた。
「これを大広場に持って行ってくれないかい。これがないと大変なことになるんだ」
 エムが口を開くより先に老女が突き出してきたのは、小さく地味な巾着袋だ。
「大広場に、これを?」
 思わずそう聞き返していたのは、その広場こそが、今これから花嫁のお披露目会が行われるはずの会場だったからだ。

 この地方の領主一族の婚約というのは少々特殊である。
 「虹色の小鳥」が花嫁を選び出すという昔の言い伝えから、今でもそれに則った披露会を行っている。身分の別なく人々を大きな広場に集め、その人ごみに紛れた花嫁となる娘が、虹色の小鳥を空に放つ。それにより娘は皆に祝福を受け、夫となる男に迎えられる――。
 つまりは披露会の余興のようなものだが、これがなかなか盛り上がる。偽の花嫁役も用意され、普通の小鳥を何羽か放って人々を沸かせるという前座付きだ。逆に言えば、この儀式なしに領主一族の婚約が成立したことはこれまで一度もなかった。
 エムは改めて老女と小さな巾着を見比べる。
 ……心なしか、巾着の中身が少し動いているように見えるのだが。
「ちょっと、これ」
「何も聞かんでくれ。とにかく大広場に、今すぐだ」
「何も聞かずにそんな仕事を引き受けられるか!」
「いいかい、巾着の口を緩めちゃ駄目だよ。私はこの通りの老体だからあんたに頼むんだ」
 無理やり押し付けられた巾着の口から色鮮やかな「何か」がわずかに見えた気がしたのは、きっと気のせい――だったらいい、エムはそう思った。



コメント

非公開コメント

担当Yです。
リレー小説第1回です。
あの超アバウトな内容からこんなに素晴らしいものができるんだから…っ! 
巾着の中はなんなのか、誰がなにに間違えられるのか。後に続く人次第ですね。楽しみ!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

リレー小説、どきどきしながら拝見しています。
ひとつ希望というか、お願いがあるのですが…
私だけかもしれませんが、ブログの色調が淡く、全体的に読みづらいのです。
以前の方が色のメリハリがあって読みやすかったように思います。
あまり視力がよくないこともあり、もし機会がありましたら、ブログのテンプレートの色調を変更願えないでしょうか。
勝手なことを言って申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。

No title

>和泉新さま
こんばんはー。いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます!
おおお、楽しんでいただけて光栄でございます!
読者の皆さんとも一緒になって盛り上がりたかったので、
和泉さまのようなコメントとっても嬉しいです。
私も和泉さまと同意見です(笑)
いっそいつも出来ないことをやっていただければいいなと思ってます。
もうすぐ次回更新…できればいいな。
よろしければまた見に来てやってくださいませ。
それでは!

>葵さま
コメントありがとうございます!
楽しんでいただけて嬉しいです。私もドキドキしながらやっております。
テンプレート変えてみました。いかがでしょうか!
気を使わせてしまってすみません。
また何かありましたらお気軽にお申し付けくださいませ。
よろしければまた見に来てやってくださいね。
それでは。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

>明夜さま
コメントありがとうございます!
ですよねー!リレー小説面白いですよねっ。
1周まわったら、そこでまとめてお読みいただけるように、ページをつくろうと思っています。パソコン共有だとなかなか読めないですよね。更新日がランダムでほんとうにすみません!
リレー小説以外でも、みなさんに気軽に喜んでいただける記事を目指して頑張ります! 応援ありがとうございます!! 元気もりもりになりました!

レガロシリーズ編集部

近刊情報やイラスト情報を公開!

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。